『20歳のソウル』Production Notes

2022.07.31
最新情報
新しいステージへ ~夢の続き~

皆さん、こんにちは。

中井由梨子です。

10週間も上映を続けてくださった大阪のTOHOシネマズ梅田様など、多くの劇場様も上映を終えていますが、また新たに始まったり、続けてくださっているところもたくさんあります!市船野球部が甲子園を決めて、改めてイチフナの魅力を知ってくださった方々のために、まだまだたくさんの方の心に大義くんを届けていきたい…!

これからも「20歳のソウル」チーム、前進を続けます。

このプロダクションノートも本日で終了予定だったのですが、市船が甲子園に出場を決めたことで終わってはいられない!と思い、可能な限り、甲子園レポートも含めて更新していきたいと思います☆

しかし今日をひとつの区切りとして、これまで大義くんプロジェクトを率いてこられた秋山純監督について、お話させてください。

すでに数々のインタビューでもお答えしていますが、この5年間の始まりの日、最初に大義くんと出会ったのは私ではなく、秋山監督です。朝日新聞の岩崎記者が書いた「窓」という記事の中の告別式の動画を私に送って来られたことがきっかけでした。

秋山監督は、某テレビ局に33年勤務し、スポーツ、ドキュメント、ドラマと数々の現場を渡り歩いてこられ、その経歴は実に華々しいです。中でも高校野球番組のプロデューサーとして、球児たちを見つめ続けた経験は秋山監督の今を形作る重要な一部になっている気がします。多くのスポーツ、特に野球にはとても精通していて、ゲーム流れの予想が怖いくらいに当たります(笑)

「20歳のソウル」の野球シーンがあんなにも臨場感たっぷりに仕上がっているのは、この監督の野球愛に拠るものだと私は考えています。

 

これは中井の主観ですが、秋山監督は非常に頭の回転が速く、IQの高い方(笑)。

速読術に長けており、一日に3冊の文庫本を平気で読み切ってしまったり。数々のテレビドラマ、映画を集中的に何十本も観たり。(好きな監督はタランティーノだそう)

とにかく勉強熱心で情報収集の上手い方です。

 

秋山監督の現場は、何度か助監督としても入らせていただいたことがあり、撮影方法を間近で見てきました。「撮るスピードが速い」と皆が言いますし、実際本当に速くて、次々にシーンを撮影していきますので、一日に何十シーンも撮影することが多々あります。

(これまでの最高記録は一日に37シーン撮影でした。※映画「朝陽が昇るまで待って」)

 

当然、ついていくスタッフたちはフル回転です。

まだ次のシーンの用意ができていないのに、撮影クルーたちが到着してしまう。常に時間との闘い。けれど、雑なものを出すわけにはいかない。だから足りない部分は他のセクションのスタッフが補い間に合わせる。そうやって秋山組は常に全員野球で撮影に挑んできました。

 

どうしてこんなに速いんだろう?また、速く撮らなければならないんだろう?私は傍で見つめながらずっと答えを探しつづけていました。

 

いくつかのアンサーが見つかりました。

 

「演じるな、存在せよ」をモットーとする秋山監督にとって、俳優さんのお芝居の鮮度はとても重要です。ですから、殆どと言って良いほど1テイク目を採用し、何度も繰り返して同じシーンを撮影することはあまりありません。俳優という職業を信頼し、作家・脚本家という仕事をリスペクトしている。だから現場で長々と話し合ったり、本を修正したりすることもめったにありません。それらはすべて撮影前に済ませてくる、というのが監督の信条です。

二つ目は、天気や空の色の保存。

うつろう自然光、一瞬しか現れない景色を捉えること。「晴れの日には晴れの絵を、雨の日には雨の絵を」というポリシーのもと、自然に逆らわない撮影を行うためにはスピードは欠かせません。CG技術に頼れば人工で美しい風景は作れますが、莫大な予算と時間も要しますし、自然が作り出す芸術をカメラに収めてスクリーンに広げて感動を伝えたい。そういう想いがあります。

 

さらに三つ目。これは意外かと思われるかもしれませんが、「予算」です。秋山監督はクリエイターの面も持ちつつ、実はプロデューサーとしてのキャリアも分厚く、頭の中が常に数字で溢れているような人。もともと数学博士と揶揄されたほどの理数系で、演出もすべて物理学で行っている、といつも仰います。つまり、「時は金なり」。時間をかければその分予算も膨れ上がっていく。特に「20歳のソウル」の撮影時は、コロナ旋風の中、緊急事態宣言が何度も発令されていた頃です。撮影がストップしてしまえば、その分費用も膨らみ、仕上がらない事態も招きかねません。

 

監督にとって「時間」との闘いは、作品生命との闘いでもあるのです。

 

以前、秋山監督がSNSなどでお配りしていた「演出ノート」をお読みになった方ならお分かりかもしれませんが、この「20歳のソウル」は時間の描き方がひとつの大きな主題となっています。時間の流れ、速さは主観的なものであって決して絶対的ではない、という視点。監督によって仕掛けられた数々のトリックによって、私達は大義くんの人生に没入し、また自分の人生と照らし合わせて涙することができるのかもしれません。

そんな秋山監督の芸術性、人間性に惹かれて集まってくださった豪華なキャストの皆様と、

ハイレベルな技術を持つ撮影スタッフ。そして「20歳のソウル」に想いを寄せてくださる、皆様に出会えたことは、私にとっても、きっと大義くんにとっても大きな宝物な気がします。

 

「20歳のソウル」は、これから次のステージへと向かいます。

私もプロダクションノートはいったん筆を置き、深呼吸して、大義くんと一緒に新しい道のりを歩いていきたいと思います。

 

原作をお読みでない方にはぜひ一度手にとっていただきたいですし、「斗真の物語」の世界も広げていきます。これからもどうぞよろしくお願いします!

 

 

皆様、映画と共に、このノートを愛してくださり、本当にありがとうございます。

秋山純

宮下涼太

中井由梨子

 

 

ただいま、絶賛上映中「20歳のソウル」引き続きお待ちしております!

どうぞ劇場へ足をお運びください!

 

©2022「20歳のソウル」製作委員会