皆さん、こんにちは。
中井由梨子です。
明日は、初めて大義くんの記事が
朝日新聞に掲載されてから1799日目。
本日、2022年3月6日。映画『20歳のソウル』初号試写が行われます。
場所は築地、松竹本社にある東劇の試写室。
開館は1930年という伝統ある場所です。
やっと。
この世に映画として、産声を上げます。
大義さん。
大義さんのご家族。
高橋健一先生をはじめとした、市船吹奏楽部の先生方に見ていただく日。
お母様が朝日新聞の「声」欄に投書し、記事として取り上げられ、それを秋山監督が見て、私が取材に行きました。
それが2017年の4月。
ちょうど5年前のことです。
取材を続けながら、その年の11月、私は小説に先立って舞台『JASMINE~神様からのおくりもの~』を上演いたしました。
大義くん、恋人の愛来ちゃん、そして親友のヒロアキ。
たった三人の登場人物。
中野の小さな劇場での、ささやかな芝居。
まだ大義くんが亡くなって1年も経っていませんでした。
私たちは稽古場で、舞台で、大義くんの魂を感じ続けていました。
傍にいてくれている感覚がしていました。
会場には大義くんから贈られた青と白の花
客席に溢れた温かい涙。
そして翌年の2018年。
ついに小説という形で小学館さんから単行本が出版されます。
この小説を書くにあたり、一度も大義くんに会っていない私が書くには、あまりに高いハードルで、書くことを何度も躊躇しました。
お母様の目線で書くことも、私がやってはいけない気がしていました。
大義くんを知るたびに
「私が書いてはいけない」
そう思いました。
そんな私の背中を押してくださったのは、大義くんのお母さまの桂子さんの笑顔と、ご家族の温かさ、そして高橋健一先生と市船吹奏楽部の清々しい“市船魂”でした。
「中井の思う通りに書いてみろ」
高橋先生は、何度もそう言ってくださいました。
一章、一章、少しずつ進みました。
途中で「大義くん、もう分からないよ。助けて」そう言って投げ出したくなったこともあります。
けれどやめずに最後まで書ききることができたのは、皆さんの温かさがあったからです。
2021年1月26日。
秋山監督と私は
一本の電話を受けとりました。
幻冬舎の見城徹社長です。
(見城社長の755より)
「20歳のソウル」文庫版。
夢が目の前に現れた瞬間でした。
幻冬舎の皆様の誠意あるご尽力で、このお話からたった4ヶ月後の5月26日。
高橋健一先生の「後書き」をいただき、新しい姿で大義くんが世の中に出ていきました。
この文庫で、大義くんを知ってくださった方も数多くいらっしゃることでしょう。この本を愛して、日々お力添えをくださる幻冬舎の皆様に感謝は尽きません。
そしてコロナ旋風が吹き荒れていた2021年の春に、映画の撮影は敢行されました。奇跡的に、一度もコロナ感染者を出すことなく、予定から遅れることもなく、撮り漏れることもなく。
すべてのシーンを美しく、カメラに収めることができました。
大義くんと秋山組、そして市船をはじめご協力頂いたすべての皆さんの成せた神業でした。
舞台。
小学館さんからの単行本。
幻冬舎さんからの文庫本。
そして、今回ついに生まれる映画「20歳のソウル」。
すべての瞬間瞬間で手を差し伸べ、助けていただいた、たくさんの方々に心からの感謝を伝えたい。それがこの「映画」として伝えることができたなら。
本を出版してから、たくさんの方に言われました。
「どうして中井さんがこの話を書くことになったのですか?」
なんと言っていいのか分かりません。成り行き?巡り合わせ?
「船橋のご出身なんですか?」
「吹奏楽部だったんですか?」
どれも、違います。
本当に、どうして私が大義くんの話を書かせていただくことになったのでしょう。
なんのために私と大義くんが出会ったのか、今日、答えが分かる気がします。
映画を観た感想というものは、一人一人違うものです。
ですから「こう思ってほしい」という考えを押しつけることはできない。
けれど、確実に伝えたいことはあります。
今、なぜ大義君の物語を世の中に出さなければならないのか。
今日という、なんでもない一日を、生ききる。
それが一番尊いこと。
そして、一番幸せなこと。
神様の、命という贈り物なのだと。
全世界の皆様に、大義くんからのメッセージを伝えたい。
一人の人間が、その人生を精一杯生きること、生ききること、そしてそれを互いに支え合うことが「愛」なのだと。
当たり前の今日が、明日も続きますように。
平和な日々を心の底から祈りながら、新しい命が生まれる、今日の瞬間を待ちます。
大義くんの、もう一つの人生の始まりとなることを願うから。
そしてそれは、私たちすべての人間が、死んでなお続く魂を持っていることを、この映画は思い出させてくれるはずだから。
この映画に秋山監督が託した想いが、世界中に届くことを祈って。
「この映画は、希望の映画です」
©2022「20歳のソウル」製作委員会