『20歳のソウル』Production Notes

2022.05.02
最新情報
大義くんの大切な仲間「ユースケ」の存在

皆さん、こんにちは。

中井由梨子です。

 

 

船橋駅の「20歳のソウル」祭りはすごいですね!!

先日訪れた際、お声がけくださった皆さん、ありがとうございました☆

 

これからもちょくちょく船橋には訪れますので、もし中井を見かけましたらお気軽に声かけてください!

 

 

 

さて、試写会も御覧になった方ならお分かりになるかと思いますが、原作でとても大事にした、大義くんの後輩である「ユースケ」という存在を、映画では、大義くんの発病後に出会う後輩(小島樹さんが演じています)として描いています。

 

「ユースケ」のモデルとなった実際のNさんには、私は何度かお会いしてお話を伺っています。

実はこのNさんは、大義くんの発病時や闘病中にも傍にいて、間近に接していた一人ですので、私はかなり突っ込んでお話を伺っていました。

 

 

その頃の取材ノートから、こちらをご紹介します。

 

 

※※※

 

 

中学では男子の中でもリーダー的だった大義くんの後を継いで自分もリーダー格になり、部活では副部長を務めました。

高校進学の時に市船を考えたのも大義くんがいたからでした。

「来ればいいじゃん」と大義くんが誘われたことが大きく、本当は違う高校も考えていたそうなのですが、最終的には市船に決めたそうです。

大義くんの存在を追いかけて市船に入学してきたユースケさんは、中学時代には、華奢でひょろっとしていた体型だった大義くんが、高校にはいってみるみる筋肉をつけ、

がっしりとした体型になったことが驚いたそうです。その代わり、中学時代の悪戯精神はなりをひそめ、どちらかというとクールな感じになっていたとか。

 

「先輩、(高校では)おとなしいですね」と言うと、大義くんはニヤリと笑って「これからだよ」と言ったそうです。

しかしながら、すっかり高橋先生に心酔していた大義くんは、結局お利口なままで卒業していきました。

時々ユースケさんに「(高校での)俺は本当の俺じゃない」と話していたこともあったそうです。

周囲の皆から「クールでカッコつけ」と評されていた通り、大義くんは高校では精一杯かっこつけていて、なかなか素の自分のはけ口を見つけられずにいた中、

唯一、伸び伸びとした過去の自分を知っているユースケさんにそんなことを漏らしたのかもしれません。

 

「賢いけどバカなんですよ」

 

ユースケさんは夏の取材でそんなふうにも言っていました。

 

大学も同じ尚美学園大学に入り、よく学校の行き帰りを共にしてご飯を食べたり、構内の空いている教室で大義くんがピアノを弾いてユースケさんが歌ったりしていました。

 

https://twitter.com/au_by_KDDI_7/status/615799783492444163?s=20&t=VVYwU21ns29iajmEomB9LQ

 

https://twitter.com/au_by_KDDI_7/status/605651572446523392?s=20&t=VVYwU21ns29iajmEomB9LQ

 

 

大義くんは小さなサイズのスコアをいつも持ち歩いていて、電車の中でそれをじっくりと読むのが好きだったそうです。

決して勉強好きなタイプではなかったそうですが、楽譜と睨めっこしながら和声やコード進行や曲の仕組みを考えることだけは熱心にやっていたとか。

 

二度目の訪問ということもあってすっかり打ち解けて話ながら、ユースケさんは空き教室に案内してくださり、向かい合って座りました。

稽古の空き時間ということであまり時間がありません。私はすぐにユースケさんへの取材を始めました。話はいきなり核心に迫るものでした。

 

 

二〇一五年の九月二十八日のことです。

この日は木曜で、大義くんもユースケさんも大学で授業がある日でした。

ユースケさんはよく、大義くんに「何限からですか?」と聞いて、時間が合えば一緒に通学することがよくありました。

大抵、途中駅の朝霞台の駅で待ち合わせていたので、この日もそこで待ち合わせて行く予定でした。

二十六日のLINEでは「行くよ~」といつも通りの返信がきていました。

大義くんはいつも先に着いて、駅のホームのベンチに座って待っていたそうです。

 

ですからその日の朝、ユースケさんはいつも通り朝霞台の駅のホームに降り立ちましたが、いつものベンチに大義くんがいません。

しばらく待ってもいっこうに現れる様子がなく、何度も携帯に連絡をしましたが応答がありません。

やっと連絡がきたと思えば、二和病院で入院しているとのことです。

激しい咳と吐き気のためです。本人はおそらく喘息だろうとのことでした。以下はユースケさんと大義くんの実際のやりとりです。

 

***

ユースケさん「まだついてないですか。いっちゃいますよ」

大義くん「入院させられた」

ユースケさん「どうしたんですか」

大義くん「喘息―」

ユースケさん「大丈夫ですか。いつまで入院ですか?」

大義くん「まだわからない~」

***

 

その日、慌てて病院へ駆けつけると、大義くんは意外に平気そうで、検査があると言っていたそうです。

ユースケさんは翌日の二十九日にも病院へ行きました。

そこで交際相手の愛来さんにも出会い、挨拶をしました。

その時の大義くんの様子はいつもと違っていました。

 

言葉少なで表情も暗く、何かを怖がっている、と思ったそうです。

この翌日くらいから咳がひどいだけではなく声が出なくなり、筆談を行っていました。

 

「気持ちで負けないでくださいね」

 

ユースケさんは力を込めてそう言いました。むしろ、そう言うことしかできなかったのです。

 

三十一日、千葉大附属病院へ転院すると聞きました。

この時点で癌の疑いがあると告げられていたそうです。

ユースケさんはとても気になっていましたが、大義くんからの連絡を待っていました。検査結果が出るのが十月一日の予定でした。

十月二日、尚美学園大学に通う元市船生のグループLINEに、大義くんからの連絡がありました。

胚細胞腫瘍と診断されました。

心臓の前、肺、肝にも転移しているとのことで、治療が必要だから十二週間くらい学校休みます、といったさらっとした文章で、よろしくと、軽いタッチで書かれてあります。

ユースケさんは病名を聞いてさっと血の気がひく思いでした。

大義くんは適当に病気のことを話しています。

その報告に対する、グループのみんなのリアクションも「頑張れ」だとか、なんだか軽い。個人的に連絡しているのかもしれないけど、事の重大さがわかっているんだろうか。

大義くんは、こういった自分に関することを周り見せない人ではあるけれど、これは放っておけない―…と、ユースケさんはすぐに個人LINEにメッセージを送ります。

 

***

ユースケさん「肺に腫瘍があるんですか?精巣から転移したってことですよね。グループLINEでは軽く言ってましたけど、がんってことですよね。本当に12週間くらいで戻れるんですか?」

大義くん「本当に順調にいけば!」

ユースケさん「順調にいけば」

大義くん「でも12週間は本当に最短」

ユースケさん「そうか」

***

 

ユースケさんは、この時まだモヤモヤしていました。誤魔化そうとする大義くんに向き合って、自分くらいはちゃんと突っ込んで聞いたほうがいいのではないかと思ったのです。本当の

気持ちを吐き出させる場所があってもいいんじゃないかと思いました。

ですから、腫物に触るように接するのをやめ、本人の怖い気持ちを汲もうと、わざとストレートに突っ込んで聞きました。とにかく気持ちを溜め込まず、吐き出させたかったのです。

 

***

ユースケさん「すごい失礼ってゆーか不謹慎かもしれないけど、この病気の最悪の場合は?」

大義くん「病気でってよりは抗がん剤の副作用でって感じがある」

ユースケさん「副作用か、じゃあ最悪の場合死とかじゃないですね?」

大義くん「抗がん剤の副作用で亡くなることもある」

ユースケさん「そうだった、それは先生からきいたんですか?」

大義くん「そうそう」

ユースケさん「抗がん剤はいつから」

大義くん「今日!」

ユースケさん「もう始まってるんですか」

大義くん「進行のスピードが早くて早めにやらないとって感じ」

ユースケさん「LINEも正直きついですか」

大義くん「大丈夫!」

***

 

ユースケさんは、この時、自分の父が亡くなった時のことを思い出したそうです。

高校二年(二〇一三年)の春、ユースケさんが二年生にあがったばかりの五月でした。

父の容態が思わしくないのを分かりながら部活をやっていたユースケさんのもとに、亡くなったという連絡がきました。

その時、大義くんはじめ男部のメンバーは、下手に気遣う様子は一切なく、ダイレクトに話をしてくれたといいます。

辛いことでも、オブラートに包んだりせず、はっきりと話せる関係。

大義くんは中学から一緒だったのもあり、父が亡くなったユースケさんのことを気にかけ、言葉をかけてくれていたそうです。

だからこの時のユースケさんには、気遣いや迷いがありませんでした。十月四日にお見舞いに行き、再度大義くんを励ましました。

 

 

※※※

 

 

この頃、お父様を亡くした経験を持つユースケさん。

平気なふりをする大義くんのことを、放っておけなかったといいます。

 

 

実際の浅野大義くんが、心から気を許し、可愛がっていたユースケさん。

他の誰にも話さない本音を話していたであろう相手。

 

けれど、それでも病気のことはほとんど話さなかったようです。本当にかっこつけですね!!

 

 

 

私はこの大義くんのかっこよさは、やはり優しさから出るものだと思っています。

人に優しいから、人に甘えずかっこよくなれる。

ユースケさんに余計な心配をさせないように、優しさから、大義くんはそのポリシーを貫いたのでしょう。

 

 

その「かっこいい」大義くんの姿を、私は映画に昇華しました。

ぜひ、ヒーローのような姿をスクリーンで御覧ください。

 

 

公開まで、あと25日!!

 

 

https://twitter.com/au_by_KDDI_7/status/756704167822065669?s=20&t=VVYwU21ns29iajmEomB9LQ

 

 

 

 

©2022「20歳のソウル」製作委員会